ごあいさつ
角田 徹
世の中には、たのしいこと、おもしろいことがたくさんあふれています。その反対につらいことや悲しいこともおなじ分だけあふれています。
しんどいときには、ほかのひとがうらやましく見え、苦しいときには、ほかのひとにねたましい気持ちをもってしまいます。
そんな気持ちをもったところで、なにもかわらないことはわかっているのに。
そんな、しんどいときや苦しいときを、一人で乗り切ることは容易なことではありません。でも、だれかがいてくれれば、それだけでやわらかい気持ちをもつことはできます。
わたしたちは、なにもできない赤子としてこの世に生を受け、何もできない身となって死をむかえます。だれもが、ひとに身をゆだねて生れてきたのです。
ただ、なにもできないことが、なにも与えないことではありません。
親は子どもが生まれると、自らの生きる力を精一杯発揮できるようになります。子どもの寝顔を見るだけで、どんなにつらくても知らぬまに笑顔になっています。なにもできない赤ん坊からたくさんのものをもらっているのです。
齢老いて、体のきかなくなった親は、身をもって生きる意味をしめしてくれています。今日一日を大切に生きることを教えてくれるのです。
さらに、わたしたちは、すでに亡くなった人のことを思い出して、はげまされることもあります。もう、そこにはいない大切な人がこの自分を守ってくれているのだ、とかんじるのです。
私たちはいつも、だれかをたすけ、だれかにたすけられて生きています。
ひとを悪くいったり、ねたましく思うことで、だれかが楽になることはありません。救われることもありません。
そこには憎しみが憎しみをよぶ負の連鎖しかまっていません。
でも、つい、そんな気持ちをもってしまうのです。
ただ、そんな気持ちをもたなくてもいいような、もつ機会をできるだけすくなくなるようなことはできるのだと思います。
だれかがつらいときに、そのひとに寄り添えることができれば。
今回、あたらしく「就労支援センター あんず」という事業所をひらきました。
この事業所のねがいは、だれもが尊重し、尊重される関係をつくっていくことです。いいかえれば、だれもがときに強く、ときに弱い存在だということを認めあって、支えあうということです。このことができれば、「あんず」という事業所は、とてもしなやかに長く続いていくことになるでしょう。
これからも、末永いおつきあいをお願いいたします。